架空戦記『紺碧の艦隊』漫画版の魅力に迫る!
もし、第二次世界大戦の歴史が、未来を知る者たちの手によって大きく変わっていたとしたら? 荒巻義雄氏の小説を原作とし、居村眞二氏によって漫画化された**『紺碧の艦隊』は、そんな壮大な「if」の世界を描き出す架空戦記作品です。特に漫画版は、小説の緻密な設定を活かしつつも、より視覚的な軍事描写と豊かなキャラクター描写**で読者を惹きつけます。
漫画版『紺碧の艦隊』のあらすじ
物語は、第二次世界大戦で戦死した山本五十六が、なぜか38年前の「後世(ごぜ)世界」に**「高野五十六」として転生するところから幕を開けます。前世の記憶を鮮明に持つ高野は、同じく未来の記憶を持つ者たちを秘密裏に集め、「紺碧会」を結成。彼らは過去の悲劇を繰り返さないため、高野率いる紺碧会と、転生者である陸軍中将・大高弥三郎率いる青風会**が協力し、大胆なクーデターによって政府を掌握します。
新政府は日独伊三国同盟を破棄し、米国にアジア全域からの欧米勢力撤退などを求める最後通牒を発します。これにより、日本は**「アジア解放のための開戦」**へと突き進むことになります。
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驚異の「未来兵器」と戦略
この物語の大きな魅力は、未来の知識を活かした**「技術の前倒し」と「兵器のインフレ」にあります。主役となる極秘潜水艦隊「紺碧の艦隊」**は、その象徴です。
- 紺碧艦隊の潜水艦: 光子魚雷や音響兵器といった独自の架空兵器を装備し、大幅に性能が向上しています。改装後の伊600型潜水艦は、バルバスバウの追加、VLSのような発射機、格納式の対空機銃、最新型の電子機器、そしてヴァルター機関を備え、安全深度や航続距離が50%も向上。さらに、伊900型揚陸潜水艦は500人の海兵団と大型舟艇6隻を収容し、神出鬼没の輸送補給を可能にします。
- 対空誘導噴進弾(対空ミサイル): 電探と連動し、方位と射角を調整、熱源誘導でエンジン部分を正確に狙うなど、高精度な能力を発揮します。
- 海底魚雷「置き土産」: 作戦に応じて色や音響などの起動方法を選択でき、戦後も回収が考慮された画期的な兵器です。
- 新型水上ジェット機「噴式春嵐」: 最高時速850キロを発揮し、30ミリ機関砲2門などを武装。高高度爆撃機に対抗できるロケットエンジン搭載の戦闘機(震電の前倒し開発など)や、誘導弾も準備されています。
日本はこれらの「転生チート」兵器と、転生者たちの緻密な戦略によって、真珠湾攻撃以降もアメリカに勝ち続け、東京空襲を退け、原爆投下もロス・アラモス研究施設への奇襲作戦によって回避します。最終的には、米国との講和を達成し、世界は日・米・独の三つ巴の混沌とした状態へと移行していきます。

影の政府の陰謀、ディープステートが~!!
主要登場人物たち
この壮大な歴史改変を彩る、個性豊かなキャラクターたちをご紹介します。
日本帝国
- 高野五十六(たかの いそろく): 前世で山本五十六として戦死した人物が転生した姿。海軍中将から軍令部総長となり、紺碧会の中心人物として「紺碧艦隊」や「旭日艦隊」の生みの親でもあります。
- 大高弥三郎(おおたか やさぶろう): 前世の記憶を持つ転生者の一人で、陸軍中将。陸軍内で「青風会」を結成し、高野率いる紺碧会と共にクーデターを成功させ、内閣総理大臣に就任します。陸軍軍人でありながら海軍力を重視する珍しい人物です。
- 前原一征(まえはら かずゆき): 海軍少将で、秘匿潜水艦隊「紺碧艦隊」の司令長官。軍事機密として生存が秘匿され、陸上では従軍画家「富嶽太郎」に変装し活動することもあります。
アメリカ合衆国
- ヘンリー・ルーズベルト: 米大統領。「海の目」と結託し日本を戦争へ引きずり込みますが、物語終盤で「海の目」組織の最高位である「大至高」としてベンツァーと接触しています。
- ルイス・マッカーサー: 米陸軍元帥。
- ハリエット・アイゼンハワー: 米陸軍元帥。後にクーデターを敢行し、大統領に就任して日本と和睦します。
- ドナルド・ダック・リーガン: 米海軍少将。ダッチハーバー沖海戦での敗北後、日米和睦を推進する立場となり、高杉とは親友の間柄になります。
潜水艦さえ作っておけばOK論者のバイブル
ナチス第三帝国(神聖欧州帝国)
- ハインリッヒ・フォン・ヒトラー: 総統。後に神聖欧州帝国の皇帝に即位し、霊能力を持つ覡王(げきおう)として描かれています。
- コンラッド・フォン・ロンメル: 独陸軍元帥。後にヒトラーが自分を抹殺しようと企んでいることを知り、数十万の将兵と共に亡命臨時政府を樹立し、大高弥三郎の盟友となります。
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各国の戦略と世界の行方
- 日本: 転生者たちの未来知識と奇想天外な戦略によって、アメリカに勝ち続け、歴史を有利に改変していきます。「より良く負ける為」と称しながらも、核兵器開発をあらゆる手段で阻止し、成功させます。膨大な予算を伴う大和計画を凍結し、他の戦力を充実させるなどの政策を展開。最終的には緻密な戦略と外交によって米国との講和を達成し、世界は日・米・独の三勢力で覇権を分かち合う混沌とした状態となります。
- アメリカ: 当初は「海の目」と結託したルーズベルト大統領によって日本との戦争に引きずり込まれます。工業力の**「超物量」**によって何度も戦力を復活させますが、日本側の「転生チート」兵器や戦略に苦戦。物語の終盤では、一部の軍人によるクーデターで和平派が政権を握り、日本と和睦します。
- ドイツ: 「超兵器で超帝国」と評されるように、強大な軍事力と科学力を誇ります。作中では、史実よりも進んだ熱探知誘導弾などを開発しており、その科学力チートぶりがうかがえます。ヒトラーの霊能力も戦略に影響を与え、ヨーロッパだけでなく全世界への進撃を目指します。最終的には日・米・独の三勢力の一角として世界の覇権を分かち合うことになります。

実は世界の真実が書いてあるんだw。
最後に
**『紺碧の艦隊』**は、日本に都合の良い歴史改変がなされているため、見る人を選ぶという評価もあります。しかし、未来を知る人間がありったけの最善策を持ち込んだらどうなっていたか、というシミュレーションとして、今見ると違った感想を持つことができる作品です。
架空戦記やSF、そして歴史の「もしも」に興味がある方は、ぜひ一度、この壮大な物語の世界に触れてみてはいかがでしょうか?