ドタバタSFラブコメディの金字塔!『うる星やつら』の魅力に迫る
『うる星やつら』は、SFラブコメディというジャンルを確立し、今なお多くのファンに愛され続ける高橋留美子先生の代表作です。ごく普通の日常に突如として宇宙人や妖怪といった「何でもあり」の要素が加わり、予測不能なドタバタ劇が繰り広げられるのが最大の魅力。今回は、そんな『うる星やつら』の物語と個性豊かなキャラクターたち、そして作品が持つ普遍的な魅力についてご紹介します。
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物語の始まりと終わり、そして終わらない鬼ごっこ
物語は、強大な軍事力を持つ宇宙人・鬼族が地球に攻めてくる場面から始まります。地球の命運を賭けたのは、まさかの1対1の「鬼ごっこ」!地球代表に選ばれたのは、女好きで何の取り柄もない高校生、諸星あたるでした。対する鬼族の代表は、虎縞模様のビキニがトレードマークの美少女、ラム。
自在に空を飛び、あたるを翻弄するラムでしたが、あたるは幼馴染のガールフレンド・三宅しのぶからの「結婚」を条件に奮起。見事ラムの頭の角を掴むことに成功します!しかし、あたるが叫んだ「結婚じゃー!」はラムへの求愛だと勘違いされ、ラムはあたるを受け入れ地球に残ることを決意してしまうのです。
これ以降、ラムはあたるを「ダーリン」と呼び慕い、二人の果てしない「鬼ごっこ」が再開。あたるとラムを中心に、さらにユニークでハチャメチャな人々や宇宙人が次々と集結し、友引町は毎日が大騒動になります。
原作漫画の最終回は、新装版34巻に収録されている「ボーイ・ミーツ・ガール」。連載第1回目と同じく「鬼ごっこ」で締めくくられます。あたるは結局「好きだ」とは言わないものの、その言葉を重く受け止めていることが示唆され、読者に二人の未来を想像させる余韻を残す終わり方となっています。
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予測不能な日々を彩る個性豊かなキャラクターたち
『うる星やつら』の魅力は、何といっても一度見たら忘れられない、個性の際立ったキャラクターたちにあります。
- 諸星あたる:本作の主人公。友引高校に通う高校生で、究極の女好き。極度の凶相の持ち主ながら、ゴキブリ並みの生命力と再生力であらゆる攻撃を乗り越えます。表面上はラムに冷たい態度を取りつつも、彼女がいなくなるのはもっと嫌だと感じる、かけがえのない存在となっていきます。
- ラム:本作のヒロイン。虎縞模様のビキニとブーツを愛用する鬼族の宇宙人。空を飛び、電撃を発する能力を持ち、あたるが浮気をするとお仕置きに電撃を炸裂させます。「ダーリン」を一途に慕う姿は、多くの読者を魅了しました。
- テン:ラムの従弟で、頭に角を持つ鬼族の幼児。口から炎を吐き、女性の前では愛らしく、男子には悪態をつくため「ジャリテン」と呼ばれます。
- 三宅しのぶ:あたると同じクラスの幼なじみ。かつては恋人関係でしたが、面堂終太郎登場後は彼に執心。怒ると机を持ち上げるほどの怪力の持ち主です。
- 面堂終太郎:友引高校に転入してきたあたりのライバル。強大な財力とルックスで女子生徒から絶大な人気を誇る面堂財閥の跡取り。極度の暗所恐怖症と閉所恐怖症ですが、女性の前では隠します。ラムに惚れ込み、積極的にアプローチします。
- 藤波竜之介:物語中盤から転入。女性ですが、父親に男として育てられたため、男っぽい言動が特徴。女の子らしく生きたいと願い、セーラー服やブラジャーに憧れています。
- 錯乱坊(チェリー):友引町に居着く遊行僧。あたるの不運の相を的中させ、不吉な予言を告げては周囲を騒がせる食いしん坊。
- サクラ:錯乱坊の姪で巫女、友引高校の養護教諭。スタイル抜群の美人で強力な霊能力を持つ大食漢。
- レイ:ラムの元婚約者である鬼族の美男子。見た目は完璧ですが、頭が悪く底なしの大食漢。興奮すると虎柄の牛鬼に変身します。
- 弁天:ラムの幼馴染である福の神族の宇宙人。男勝りで勝気なスケ番風の女性で、愛用のエアバイク流星号を乗り回します。
- おユキ:ラムの幼馴染で海王星の女王。雪と氷を操る雪女で、普段は物静かですが、その性格は冷ややかで怒らせると恐ろしいと言われています。
- ラン:ラムの幼馴染で、唇の接触で若さを吸い取ったり吹き込んだりする能力を持つ宇宙人。可愛らしい見た目ながら、怒ると牙を剥いて凶暴になり、ドスの効いた河内弁で話します。ラムへの復讐心を抱いています。
この他にも、面堂了子、水乃小路飛麿、温泉マーク、校長先生など、一度見たら忘れられない個性的なキャラクターたちが多数登場し、物語をさらに賑やかにしています。
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時代を超えて愛される理由:普遍的な魅力とキャラクターの「強度」
『うる星やつら』は、1980年代を代表する傑作漫画の一つと評されており、その評価は2020年代に新作アニメが制作されるほど衰えを知りません。特に、ヒロインのラムをはじめとする多くの女性キャラクターが魅力的に描かれている点が挙げられます。
高橋留美子先生は、主人公のあたるが安直にハーレム状態を作り出すようなラブコメとは一線を画しました。ラム(と初期のしのぶ)以外の女性キャラクターたちは、あたるのアプローチをことごとく粉砕し、あたるのことなど眼中になく、自らの道を突き進む頼もしい姿で描かれています。この「主人公の言いなりにならずに自らの道を行く」女性たちの姿は、当時の男性読者だけでなく女性読者をも強く魅了したと言われています。
また、ラム自身も「一人の男(諸星あたる)を全力で愛する女性」として描かれており、それは誰かに強制されたものではなく、彼女が自らの意思で選んだ生き方、まさに「個性」として光り輝いています。
『うる星やつら』は、時代を超えて多くの人々に笑いと感動、そして忘れられないキャラクターたちとの出会いを提供し続けています。