【AKIRA】時代を超越するSFの金字塔:その魅力と衝撃を深掘り

SF

AKIRAの魅力と衝撃を深掘り!時代を超えた傑作SFの秘密

大友克洋氏の代表作『AKIRA』は、漫画、アニメーション、そして世界中のサブカルチャーに絶大な影響を与え続けている金字塔的な作品です。今回は、その奥深い世界観と、なぜこれほどまでに多くの人々を魅了するのか、その秘密に迫ります。

 

混沌と崩壊、そして再生の物語

『AKIRA』の舞台は、第三次世界大戦後の日本。荒廃した近未来都市「ネオ東京」を舞台に、超能力を巡る軍、反政府勢力、そして不良少年たちの壮絶な争いが描かれます。

特に圧巻なのは、目に見えない超能力を緻密な絵で表現したこと、そして退廃と崩壊が細部にわたって描き出されたSF描写です。その圧倒的なビジュアルとストーリーテリングは海を越え、世界中に熱狂的なファンを生み出しました。それまでの「子ども向け」という日本の漫画・アニメのイメージを一変させ、海外の**「オタク」第一世代**を誕生させるきっかけの一つともなったのです。

『AKIRA』誕生秘話

この傑作が生まれた背景には、意外な事実があります。大友克洋氏は、『ヤングマガジン』での連載開始時、『AKIRA』がこれほどの大ヒットになるとは全く思っていなかったそうです。

作品の原型は、未完に終わった中編『Fire-ball』(1979年)にあります。大友氏は自身の画風が大きく変化した時期であったため、この作品の要素を新しい『AKIRA』の中に組み込む形で制作をスタートしました。超能力をテーマにした二人の能力者の葛藤や対決、政府による超能力研究、反政府ゲリラ、そして都市の破壊といった要素は、『Fire-ball』から受け継がれたものです。

舞台が復興した新首都「ネオ東京」に設定されたのは、大友氏の「東京が好きで、別の形で東京を語り直してみたい欲望があった」「戦後の復興期から東京オリンピックの頃のような混沌を構築したかった」という思いからでした。偶然にも、連載開始の1982年から37年後という設定だった**「2020年の東京オリンピック」**が、現実の開催年と一致したのは有名なエピソードですね。

 

 

若者たちの成長と社会への問いかけ

主人公にバイクの暴走族の不良少年を選んだ理由として、大友氏は「つまんない世界にいる人間たちを主人公にして、東京の様々な政治や大きな秘密に触れながら、どうしようもない若者たちが少しは成長していく」話を描きたかったと語っています。これは、「社会に参加して、または世界に参加して、自分たちで自分たちの道を発見する話」というメッセージも込められているのです。

漫画版とアニメ映画版:それぞれの魅力

アニメ映画版が約2時間に凝縮された壮大なストーリーであるのに対し、原作漫画は全6巻にわたる長編です。映画では描ききれなかった政治や宗教の背景、より詳細なキャラクターの心理描写、そして圧倒的なスケールの最終決戦が描かれています。

特に漫画版では、以下のような展開が詳細に描かれています。

  • ネオ東京の再崩壊と大東京帝国: 漫画版では、アキラの再覚醒によってネオ東京は二度目の崩壊を迎えます。その後、鉄雄はアキラを「大覚」に祭り上げ、「大東京帝国」という勢力を築き上げ、薬物を用いて能力者を育成しようとします。
  • 金田の運命: ネオ東京崩壊時に一度姿を消しますが、最終決戦で鉄雄と対峙します。
  • ミヤコ教団の重要な役割: アニメ版では脇役だったミヤコ(元ナンバーズ19号)が、漫画版では被災者の救済や鉄雄との対峙など、物語の重要な勢力として描かれています。
  • 鉄雄の進化と結末: SOLによる攻撃で右腕を失っても超能力で再生させ、月の一部を破壊するほどの力を手に入れます。最終的には力を制御できなくなり、アキラとナンバーズによって別の宇宙へと導かれるという、より深遠な結末が描かれています。
  • カオリの役割: アニメ版では鉄雄のガールフレンドですが、漫画版ではネオ東京崩壊後の難民であり、鉄雄の侍女として彼の精神的な支えとなりますが、悲劇的な最期を迎えます。
  • 加筆されたエピローグ: 単行本最終巻には、雑誌連載時のラストシーンに30ページ以上にわたる後日談が加筆修正されており、金田たちが大東京帝国を受け継ぎ、崩壊したはずのネオ東京が元の姿に戻っていくビジョンで締めくくられます。この加筆が、読後の印象を大きく変えるポイントとなっています。

主要人物とその特徴

金田(金田正太郎)

物語の主人公であり、職業訓練校の生徒で、自身が率いるバイクチームのリーダー格です。

  • **「健康優良不良少年」**を自称し、改造したバイク(盗品)を乗り回す日々。
  • 運動神経抜群で度胸があり、仲間や走り屋からの人望も厚いです。
  • 鉄雄とは幼馴染で、幼い頃からいじめられがちな鉄雄を庇護する親友でした。
  • 反政府ゲリラのケイと出会い、共に物語の核心へと巻き込まれていきます。
  • 鉄雄に山形を惨殺されたことをきっかけに、彼を止める使命感を抱きますが、心の奥底にはかつての親友への情も残しています。
  • 漫画版では、 アキラの力に一度飲み込まれ姿を消しますが、後に再登場し、第三次世界大戦を含む一連の出来事の真相に迫ります。
  • 物語の終盤、アキラと鉄雄が去った後、ケイや甲斐たちと共に「大東京帝国」を受け継ぐ重要な役割を担います。
  • かつて興奮剤のような薬物を常用していましたが、物語後半からは見られなくなり、薬物で衰弱した鉄雄を殴って咎める場面もあります。
  • 作中では「金田正」という姓で呼ばれることが多く、本名で呼ばれることはありません。

島 鉄雄(しま てつお)

もう一人の主人公であり、金田の幼馴染。通称**「41号」**と呼ばれます。

  • 当初は金田のバイクチームの下っ端でしたが、謎の超能力少年タカシとの接触を機に、自身に強大な超能力が覚醒します。
  • 能力は爆発的に成長し、アキラに匹敵するほどの力を手に入れ、世界を翻弄する存在へと変貌します。
  • 幼い頃から金田に対して常に劣等感を抱いており、能力覚醒後はその全能感に溺れ、凶暴な性格へと一変。かつての仲間である山形を金田の目の前で惨殺します。
  • 軍のSOL(軌道レーザー衛星兵器)による攻撃で右腕を失いますが、漫画版ではその超能力で腕を再生させ、月の一部を破壊するほどの絶大な力を手に入れます。
  • 最終的にはその力を制御できなくなり、肉体と精神が崩壊。アキラとナンバーズによって別の宇宙へと導かれ、物語から去ります。

アキラ

この作品の核心に位置する少年で、通称**「28号」**。

  • 政府の秘密超能力実験の被験者で、その成功例とされています。
  • 1982年に能力が暴走し、東京崩壊(第三次世界大戦の引き金)を引き起こします。その後、その事実は「新型爆弾」によるものと隠蔽され、アキラ自身は地下施設で極秘に冷凍封印されていました。
  • 漫画版では、 鉄雄によって地下から連れ出された後、タカシの死をきっかけに再び覚醒し、二度目のネオ東京崩壊を招きます。
  • その後、鉄雄たちによって「大覚」として祭り上げられますが、自我を失ったまま、周囲の人間から奪い合いの対象となります。
  • 漫画版では、 鉄雄の最後の覚醒に応じて真の覚醒を迎え、ナンバーズと共に新しく誕生した宇宙へと去っていきます。
  • 「28号」というナンバーは、漫画家・横山光輝の漫画『鉄人28号』へのオマージュです。

ケイ

物語のヒロインであり、反政府ゲリラのメンバーです。

  • ゲリラグループのリーダーである竜(竜作)とは息の合ったコンビで、当初は竜を慕っていました。
  • 偶然出会った金田に窮地を救われ、金田からの言い寄りには抵抗しつつも、次第に行動を共にします。
  • 漫画版では、 ネオ東京崩壊後、ミヤコによって彼女の超能力の触媒となる能力が見出され、自らの意思で鉄雄と対決する重要な役割を担います。
  • 本名は作中では明かされていません。

敷島大佐(しきしまたいさ)

軍の実質的な最高指揮官で、凍結封印されているアキラの管理者でもあります。

  • 父親がアキラによる災厄で死亡したことから、アキラの存在に強く執着しています。
  • 漫画版では、 行方不明となったアキラを保護するためクーデターを決行しますが、根津によるタカシの誤射がアキラの再覚醒を招き、ネオ東京の崩壊を目撃することになります。
  • ネオ東京崩壊後は、単身で鉄雄の抹殺の機会を伺い、後にケイやチヨコと共闘します。
  • 名前のモデルは『鉄人28号』の敷島博士です。

ミヤコ

宗教団体を指導する老婆です。

  • かつてアキラの力を目の当たりにして失明しましたが、強い感応力で他者と視覚を共有できます。
  • 漫画版では、 仮死状態のまま廃棄された元ナンバーズの一員(19号)であることが明かされます。
  • ネオ東京崩壊後は、多くの人物に助言を与え、被災者の救済を行いながら、鉄雄と直接対峙するなど、物語の重要な勢力として描かれています。教団内で薬物と併用して僧たちの能力開発も行っていたことが示唆されています。

ナンバーズ(タカシ、キヨコ、マサル)

アキラと共に1980年代の超能力実験の被験者であった子供たちで、手のひらに番号が刻印されています。

  • タカシ(26号): 8歳で肉体成長が止まり、老化だけが進行しています。最も幼い性格で、外の世界への憧れから脱走し、鉄雄の能力覚醒のきっかけを作ります。漫画版では根津に誤射され死亡し、その衝撃がアキラの再覚醒とネオ東京崩壊の引き金となります。
  • キヨコ(25号): 9歳で成長が止まり、未来予知能力を持ちます(93-95%の確率で当たる)。身体はひどく弱く寝たきりですが、超能力で自分自身やベッドを浮かせることができます。漫画版ではネオ東京崩壊後にケイやチヨコに保護され、後にミヤコ教団に身を寄せます。
  • マサル(27号): 8歳で成長が止まり、小児麻痺のため念動力で浮遊カプセルに座って移動します。大人への憧れが強く、冷静で落ち着いた性格です。漫画版ではキヨコと同様にケイやチヨコに保護され、ミヤコ教団に身を寄せます。
  • これらのナンバーズの番号とキャラクター名は、『鉄人28号』に由来するオマージュです。

山形(やまがた)

金田のバイクチームの特攻隊長的存在です。

  • 腕っ節が強く気性が激しいですが、仲間には義理堅く面倒見が良い性格です。
  • 原作漫画とアニメ映画版のどちらにおいても、能力を得て暴走する鉄雄に詰め寄ったことで惨殺されてしまいます。

甲斐(かい)

金田のバイクチームのメンバーで、鉄雄よりも小柄です。

  • ラフな格好を好む金田たちとは異なり、ジャケットにタイといったトラッドな服装を好みます。
  • 漫画版では、 アキラ覚醒によるネオ東京崩壊後も廃墟にとどまり、ジョーカーと共に「大東京帝国」に対抗する機会をうかがっています。

ジョーカー

金田たちと敵対するバイクチーム「クラウン」のリーダーです。

  • 身長2m、体重150kgを超える巨漢で、チームメンバーのほとんどが違法薬物に耽溺するジャンキーです。
  • 能力に覚醒した鉄雄にリーダーの座を奪われ、少年院に送られます。
  • 漫画版では、 少年院で災厄に巻き込まれ重傷を負いますが、同じく送られていた甲斐に助けられ、以降、打倒鉄雄を掲げて行動を共にします。

根津(ねづ)

野党に属する政治家で、最高幹部会の一員です。

  • 表ではミヤコ教団の力を背景に政界工作を行い、裏ではケイの反政府ゲリラに資金を与え指導していました。ミヤコからは「ネズミ」と揶揄されています。
  • 漫画版では、 アキラを狙って拳銃を撃ちますが、その弾がタカシに当たり、軍の応射によって射殺されます。これがアキラの二度目の暴走を招き、崩壊する建物の瓦礫と共に消滅します。

チヨコ

反政府ゲリラの武器調達・連絡員を務める巨体の女性で、通称「おばさん」。

  • 原作漫画のみに登場します。
  • ケイを実の娘のように大切に思っており、大佐に匹敵する体格と高い戦闘能力を持ちます。
  • ネオ東京崩壊後は、ケイと共にマサルとキヨコを保護し、アキラ・鉄雄の勢力に対抗していました。

カオリ

  • 漫画版では、 ネオ東京崩壊後の難民で、隊長によって鉄雄の慰安婦として連れてこられます。
  • 鉄雄にもらった薬を飲まなかったために生き残り、以後は鉄雄の侍女として彼を精神的に支え、アキラの遊び相手もします。
  • 当初は被災体験のショックから感情の起伏が少なかったものの、本来は明るく優しい性格です。
  • 鉄雄の殺害を企てた隊長に背後から撃たれて死亡します。

これらの魅力的な人物たちが複雑に絡み合い、壮大な『AKIRA』の物語が織りなされています。彼らの背景や心理描写を知ることで、作品をさらに深く楽しむことができるはずです。

 

栄光の受賞歴

漫画『AKIRA』は、その傑出した内容が国内外で高く評価されています。

  • 1984年: 第8回講談社漫画賞一般部門
  • 1992年: アイズナー賞 最優秀彩色部門(国際版『AKIRA』)
  • 2002年: アイズナー賞 最優秀アーカイブプロジェクト部門および最優秀国際作品部門

時代を象徴するメカニックデザイン

『AKIRA』を語る上で欠かせないのが、その洗練されたメカニックデザインです。特に主人公・金田が操る「金田のバイク」は、極端に長いホイールベース、低い車高、フィート・フォワードタイプ、そしてデジタルメーターなど、その未来的なデザインが画期的でした。赤一色の車体に「成田山」や「Canon」「HONDA」といったステッカーが貼られているのも特徴です。

このバイクのレプリカは各国のイベントで展示され、ハリウッド映画『レディ・プレイヤー1』にも登場するなど、世界的な知名度を誇ります。そのデザインは、映画『イージー・ライダー』のチョッパーバイクのハンドルと、『トロン』のライトサイクルの楕円形のフォルムから着想を得たと言われています。

また、軍の最新兵器として登場する一人乗りの有人飛行兵器「フライング・プラット・ホーム(FPH)」や、自律行動を行う地上型無人機「セキュリティボール」なども、近未来のテクノロジーを詳細に描き出しており、作品の世界観をよりリアルなものにしています。

いかがでしたでしょうか? 『AKIRA』がなぜこれほどまでに多くの人々に影響を与え続けているのか、その一端を感じていただけたなら幸いです。まだ読んだことがない方はぜひ、この不朽の名作の世界に飛び込んでみてください!

 

 

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