『スプリガン』は、たかしげ宙が原作、皆川亮二が作画を手掛けた日本のSFアクション漫画です。1989年から1996年にかけて『週刊少年サンデー』で連載され、コミックスの累計発行部数は1000万部を超える大ヒットを記録しました。連載終了から四半世紀以上が経過した今も、その魅力は色褪せることなく、名作として語り継がれています。
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作品の背景とインスピレーション
本作は、1980年代から1990年代にかけて流行した「オーパーツ」や「超古代文明」といったオカルト趣味の影響を強く受けており、それを痛快な娯楽作品へと昇華させた傑作として国内外で高い評価を得ています。原作者のたかしげ宙は、映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』のラストシーンから、「あれが全部危ないものだったら大変だな」という発想で作品の構想を始めたと語っています。作画の皆川亮二も、原作を読んだ際に『レイダース』好きが書いたものだと感じ、自身もスピルバーグの映画に影響を受けて漫画を描いていたため、話が合うかもしれないと思ったそうです。
単なる冒険活劇に留まらず、連載当時の世相や社会情勢、例えば学歴社会や世の中への怒りといった要素も作中に投影されており、これにより作品が多面的なものになっていると作者自身も認めています。宗教対立、民族紛争、環境問題といった社会的なテーマを背景に、人間の善性と悪性が深く描かれた重厚な物語です。
物語の舞台と「アーカム」の役割
物語の舞台は、はるか超古代に現代を遥かに上回る科学技術を保有しながらも、自らが招いた戦争や災害によって滅びた文明が存在する現代社会です。深海から引き揚げられた金属板には、その超古代文明の人々からの「我々の残した遺産を、悪しき者より守れ」という警告が記されていました。
このメッセージに従い、巨大財閥「アーカム」が特殊組織を擁して設立されました。アーカムの目的は、超古代文明の遺産である「オーパーツ」(時代を超越した出土品)や遺跡が国家などに悪用されないよう、それを回収し封印することです。アーカムは、超古代文明の研究を通じて、「賢者の石」を触媒とする精神感応金属「オリハルコン」の精製や、通常の30倍以上の筋力を発揮させる防護パワードスーツ「A.M.(アーマード・マッスル)スーツ」の実用化など、数々のオーバーテクノロジーを実現し、それらを遺跡保護任務に活用しています。
アーカムのS級エージェントは「スプリガン」と呼ばれ、彼らは超人的な戦闘力や特殊能力を持つ精鋭集団です。その名は、財宝を守る妖精「スプリガン」に由来します。
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主要登場人物の紹介
『スプリガン』には、個性豊かで魅力的なキャラクターが多数登場します。
- 御神苗優(おみなえ ゆう) 本作の主人公であり、都内の高校に通う高校生でありながら、日本で唯一のスプリガンとして世界中を飛び回る特殊任務を遂行しています。かつて米軍の極秘プロジェクト「COSMOS」に所属し、高度な戦闘訓練を受けた経験があり、その影響で常人を遥かに上回る身体能力が開花しました。あらゆる銃器の扱いに精通し、素手での格闘能力も非常に高く、戦闘のエキスパートです。オリハルコン製のナイフと、通常の30倍以上の筋力を発揮させるA.M.スーツを愛用していますが、物語終盤ではA.M.スーツを着ない方が「戦いの流れ」を感じ取れるようになり、超人的な洞察力と機転で困難な任務を成功させます。彼の強靭な肉体と精神力は、どれだけ年月が経過しても色褪せないと評されています。高校生活は彼にとって初めて得られた「平和な日常」であり、任務で出席日数が不足し留年の危機に瀕しながらも、学業や学校行事にも真剣に取り組む一面があります。
- ボー・ブランシェ 2022年のキャラクター人気ランキングで堂々の1位に輝いたキャラクターです。彼は秘密結社「ネオ・ナチス」の少尉であり、超古代文明の遺産の力を利用して世界征服を目論んでいます。強者は弱者を守るべきという使命感を抱き、周囲が引くような「臭いセリフ」を平然と口にするコミカルな一面がある一方で、自分の信念に基づいて命がけで行動する芯の強さも持ち合わせています。忍者に憧れたり、日本の格闘ゲームを参考に格闘術を磨いたりと、日本好きな一面も見せます。主人公の優には「暑苦しい熱血馬鹿」「お笑い芸人」などと小馬鹿にされることが多かったものの、その実力はスプリガンクラスと認められており、彼の死は優に深い悲しみを与えました。
- ジャン・ジャックモンド スプリガンの一員で、長い金髪を後ろで結んだフランス人です。超古代文明の遺産である獣人(ライカンスロープ)の子孫であり、通常時でも人間離れした基礎能力を持ちますが、自分の血を見ると理性を失って獣人化し、身体能力がさらに向上します。気性の荒い性格で敵に対しては容赦がなく、優とコンビを組むことが多く、優を「甘ったれ」と言いながらもフォローする兄貴肌の一面があります。
- 朧(おぼろ)/ミラージュ アーカムに協力する謎の青年で、優の格闘術の師匠でもあります。中国武術と気功の達人であり、その強さは「人間が到達できるレベルの頂上にいる」と評されるほどです。朧という名は「朧げな存在」という意味で周囲が付けたもので、本名は不明です。仙人になることを目指しており、自身の鍛錬・修行に重きを置いています。
- ティア・フラット 「魔女」の異名を持つ女性スプリガンで、森に眠る大魔術師マーリンから伝授された魔術を操ります。幻影の魔獣を召喚したり、空間を捻じ曲げたりするなど数々の超自然的現象を引き起こせる強力な戦闘能力を持ち、銃器の攻撃すら通用しません。外見は若い女性ですが、アーカム設立当初からの「地下遺跡金庫の番人」であり、魔術による延命で300年もの間生き続けてきた「本物の魔女」であることが終盤で明かされます。最終的にアーカムの新会長に就任し、組織を本来の理念へと回帰させます。
- 染井芳乃(そめい よしの) 優と同年代の少女で、様々な霊と交信できる霊能力を持つ巫女です。仕込み武器や銃器を使いこなし、格闘術も高い戦闘能力を誇ります。行動原理はシンプルに「金のため」ですが、優が関わると情にほだされることもあり、完全な冷血人間ではありません。遺跡を破壊したり起動不能にしたりするため、「遺跡荒らしの芳乃」として悪名高い存在です。
『スプリガン』は、超古代文明のロマン、激しいSFアクション、そして人間の尊厳を問う深いテーマが融合した、まさに珠玉の名作です。

ああ、目が痛い、最近AIを使っていると画面に顔が映っているように見えるんだ
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